Meditation



三度、静かに呼吸する。目を伏せると瞼裏に見えるのは闇と光彩、真の無とは案外こんなものかもしれない。俺は、自分の心臓を律することを覚えていた。

脳裏に描くのは記憶にある風景。今朝の起床時間、見た風景、ベッドから降りるとまず上着を羽織ってそれから。廊下ですれ違った人数、食堂にいた人数、今日のメニュー、最初に箸を取ったのは右手、ドアを開けたのはどちらの手だった?
耳に入ってきていた会話の断片を組み立てる。稽古場に射した光は強かった。振った刀の回数は?

出来るだけ緻密にシュミレートする。俺の、他人の一挙一動。俺は何処かの脳天気と違って逐一記録なんてしない。それでいい。曖昧な記憶を辿ることに集中する。カウントダウン。一、二、三、四、五…意識を瞼裏に向け続けていると、荒れていた鼓動が静かになっていた。六、七、八、九。

…さて、何が恐ろしかったのだろう?

20050629 21:47
神田

瞑想法のひとつです。