遠いものに模倣する


畳の上で死ぬなんざ俺らしくもない。
が、与えられたからには有り難くお借りして実際転がり込んだようなもんだがそこは目を伏せ城の一室。ぼんやりまどろんでいると、歩数の割に速い軽い足音が聞こえた。小動物のようだと、最近思う。季節は春、まだ肌寒く天気は曇天。気が滅入る。空は低くて息が詰まるのに手を伸ばしても届かぬ酷さ。痛い、痛い、戦で負った傷など物の数にも入らない(いっそ心地よくさえ思う、狂ってるのかも知れない。あの爛漫とした女忍びが戯れのように云う通り)けれど、過ぎる一時半時小半時、退屈に殺されそうだ。 小動物は足りない歩幅を補おうと足を動かし、足りない身丈を補おうと背筋を伸ばす。何時だって自分より強い何かを感じているから己を最強と自負して虚勢を張る。そんなことを云ったら常のように毒を吐いて怒るだろうか。気にするな、犬の話だ。
足音が、襖の前で止まった。


2005033022:01
前田 × 伊達